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ADHD 治療

ADHD(注意欠如・多動症)の理解と支援

坂田亮介
2025年10月9日
約8分で読めます

ADHDは発達障害の一つで、適切な理解と支援により生活の質を向上させることができます。

ADHDとは

ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder:注意欠如・多動症)は、不注意、多動性、衝動性を主な特徴とする発達障害です。子どもの頃から症状が現れることが多いですが、大人になってから診断されるケースも増えています。

ADHDの主な症状

不注意の症状

  • 細かいことに注意を払えない
  • 課題や活動に集中し続けることが困難
  • 話しかけられても聞いていないように見える
  • 指示に従えず、作業を最後まで完了できない
  • 整理整頓が苦手
  • 物をなくしやすい
  • 外部の刺激で気が散りやすい
  • 日常の活動を忘れがち

多動性・衝動性の症状

  • 手足をそわそわ動かす
  • 席に座っていられない
  • 不適切な状況で走り回ったり高いところに登ったりする
  • 静かに活動することが困難
  • しゃべりすぎる、思ったことをすぐに口に出してしまう
  • 質問が終わる前に答えてしまう
  • 順番を待つことが困難
  • 他人の邪魔をしたり、割り込んだりする

ADHDの原因

ADHDの正確な原因は完全には解明されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています:

  1. 遺伝的要因:家族にADHDの人がいる場合、発症リスクが高まる
  2. 脳の機能的差異:前頭前野の活動やドーパミン系の機能に違いがある
  3. 環境要因:妊娠中の喫煙、早産、低出生体重なども関連する可能性

日常生活での工夫

時間管理のコツ

  1. スケジュール管理

    • カレンダーやスケジュール帳を活用
    • アラームやリマインダー機能を使用
    • タイマーを使って作業時間を区切る
  2. タスクの細分化

    • 大きな課題を小さなステップに分ける
    • 完了したタスクにチェックを入れる
    • 優先順位をつける

環境の整備

  1. 作業空間の工夫

    • 気が散る要素を最小限に
    • 必要なものをすぐ手に取れる位置に配置
  2. ルーティンの確立

    • 毎日同じ時間に同じ活動をする
    • チェックリストを活用
    • 習慣化するまで根気よく続ける

集中力を高める方法

  1. ポモドーロ・テクニック

    • 25分作業 → 5分休憩のサイクル
    • 4サイクル後に長めの休憩
  2. フィジェットツールの活用

    • 手持ち無沙汰を解消するアイテム
    • 集中力の向上に役立つ場合がある

治療とサポート

薬物療法

  1. 中枢神経刺激薬

    • メチルフェニデート(コンサータなど)
    • 集中力の向上、衝動性の抑制に効果
  2. 非刺激薬

    • アトモキセチン(ストラテラ)
    • 効果発現まで4週間かかるが、依存性が低い

心理社会的支援

  1. 認知行動療法

    • 問題解決スキルの向上
    • 自己管理能力の改善
  2. ソーシャルスキルトレーニング

    • 対人関係の改善
    • コミュニケーション能力の向上
  3. ペアレントトレーニング(子どもの場合)

    • 効果的な関わり方を学ぶ
    • 家族全体のサポート

学校や職場での配慮

合理的配慮の例

  • 試験時間の延長
  • 静かな環境での作業
  • 課題の提出期限の調整
  • 定期的な休憩時間の確保
  • 指示を文書で提供

コミュニケーションの工夫

  • 明確で具体的な指示
  • 視覚的な情報提供
  • フィードバックの頻度を増やす
  • ポジティブな強化を心がける

ADHDの強み

ADHDの特性は、適切に活かすことで強みにもなります:

  • 創造性:独創的なアイデアを生み出す力
  • 行動力:思い立ったらすぐ行動できる
  • 熱中力:興味のあることには深く集中できる
  • 直感力:瞬時の判断力に優れる
  • エネルギッシュ:活動的で周囲を元気づける

まとめ

ADHDは個性の一つであり、適切な理解と支援があれば、その人らしい充実した生活を送ることができます。症状による困難さを感じている場合は、専門家に相談し、自分に合った対処法を見つけることが大切です。

当院では、ADHDの診断から治療、生活支援まで、包括的なサポートを提供しています。お一人おひとりの特性を理解し、その人に合った治療計画を立てて、より良い生活を送れるようお手伝いいたします。

坂田亮介

著者

名東メンタルクリニック 院長
精神保健指定医・日本精神神経学会専門医

医学的監修済み (2025年10月9日)

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