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ADHD(注意欠如・多動症)の理解と支援

坂田亮介
2025年10月9日

ADHDは発達障害の一つで、適切な理解と支援により生活の質を向上させることができます。

ADHDとは

ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder:注意欠如・多動症)は、不注意、多動性、衝動性を主な特徴とする発達障害です。多くの方が子どもの頃から症状を経験されていますが、近年では大人になってから診断を受ける方も増えています。ADHDは脳の発達の違いによるもので、決して本人の努力不足や性格の問題ではありません。適切な理解と支援があれば、その人らしい充実した生活を送ることができる特性です。

ADHDの主な症状

ADHDの症状は、大きく「不注意」と「多動性・衝動性」の2つの領域に分けられます。これらの症状は人それぞれ現れ方が異なり、日常生活での困りごとの程度も様々です。

ADHDの原因

ADHDの正確な原因は完全には解明されていませんが、現在の研究では複数の要因が関与していると考えられています。まず、遺伝的な要因が大きく、家族にADHDの方がいる場合、発症リスクが高まることがわかっています。また、脳の機能的な違いも重要な要因で、特に前頭前野の活動やドーパミン系の神経伝達物質の働きに違いがあることが明らかになっています。

その他にも、妊娠中の喫煙、早産、低出生体重なども関連する可能性が指摘されていますが、これらは必ずしもADHDの直接的な原因ではなく、リスクを高める要因の一つとして考えられています。重要なのは、ADHDは誰のせいでもない生まれつきの特性であり、適切な理解と支援があれば十分に充実した生活を送ることができるということです。

日常生活での工夫

ADHDの特性と上手に付き合うためには、日常生活での工夫が とても大切です。ここでは、多くの患者さんが実際に効果を感じている具体的な方法をご紹介します。

治療とサポート

ADHDの治療は、薬物療法と心理社会的支援を組み合わせることで、より効果的な結果が期待できます。お一人おひとりの状況や困りごとに応じて、最適な治療方法を選択していきます。

学校や職場での配慮

ADHDの特性を理解した上で、学校や職場で適切な配慮を受けることで、持っている力を十分に発揮することができます。これらの配慮は「特別扱い」ではなく、その人が力を発揮するために必要な「合理的配慮」です。

また、周囲の方とのコミュニケーションにおいては、明確で具体的な指示をお願いすることが大切です。視覚的な情報(図表、チェックリストなど)を活用し、フィードバックの頻度を増やすことで、よりスムーズな意思疎通が可能になります。ポジティブな強化(良い行動を認めて褒める)を心がけることで、自信を持って取り組むことができるようになります。

ADHDの強み

ADHDの特性は、見方を変えると多くの強みを持っています。創造性においては、型にはまらない独創的なアイデアを生み出す力があり、多くのクリエイティブな職業で活躍されている方がいらっしゃいます。また、思い立ったらすぐに行動に移せる行動力は、新しいことにチャレンジする際の大きな武器となります。

興味のあることに対しては、周囲が驚くほどの集中力を発揮することができる「過集中」という特性もあります。この特性を活かして、専門分野で大きな成果を上げる方も多くいらっしゃいます。さらに、エネルギッシュで活動的な性格は、チームの雰囲気を明るくし、周囲の人を元気づける力にもなります。

大切なのは、これらの特性を理解し、適切な環境やサポートの中で活かしていくことです。困りごとばかりに目を向けるのではなく、持っている強みにも注目して、自信を持って生活していくことが重要です。

まとめ

ADHDは決して治さなければならない「病気」ではなく、一人ひとりの個性の一つです。適切な理解と支援があれば、ADHDの特性を持つ方も、その人らしい充実した生活を送ることができます。日常生活で困りごとを感じている場合は、一人で抱え込まずに専門家にご相談いただき、ご自身に合った対処法を見つけることが何より大切です。

ADHDと診断されることは、「レッテルを貼られる」ことではありません。むしろ、今まで理解できなかった困りごとの理由がわかり、適切な対処法を見つけるための第一歩となります。ご自身の特性を理解し、周囲の理解とサポートを得ながら、より良い生活を送れるよう、私たちがお手伝いいたします。

坂田亮介

著者

名東メンタルクリニック 院長
精神保健指定医・日本精神神経学会専門医

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