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治療

セカンドオピニオンを考えるタイミングとは

坂田亮介
2025年10月11日

今の治療で本当に良いのか不安、主治医と相性が合わない...セカンドオピニオンを考えるべきタイミング、受け方、注意点を精神科医が解説します。

はじめに

「この治療で本当に良くなるのだろうか」「主治医と話しやすい雰囲気ではない」「何か月も治療しているのに改善しない」――このような不安や疑問を抱えながらも、「主治医に失礼かもしれない」「転院は面倒」と我慢していませんか?セカンドオピニオンは患者様の権利であり、より良い治療を受けるための重要な選択肢です。本記事では、セカンドオピニオンを考えるべきタイミング、受け方、注意点を詳しく解説します。

セカンドオピニオンとは

セカンドオピニオンとは、現在の主治医以外の医師に、診断や治療方針について意見を求めることです。

セカンドオピニオンの目的

  1. 診断の確認

    • 現在の診断が適切か
    • 他の可能性はないか
  2. 治療方針の検討

    • 他に有効な治療法はないか
    • 現在の治療は標準的か
  3. 納得感の向上

    • 複数の意見を聞いて判断
    • 自分に合った治療を選択
  4. 不安の解消

    • 専門的な見解を得る
    • 安心して治療を続けられる

転院との違い

項目セカンドオピニオン転院
目的意見を聞く主治医を変える
主治医との関係継続終了
診療情報提供書必要必要
費用自費(一部保険適用)保険診療
その後元の医師のもとへ戻ることも新しい医師が主治医

セカンドオピニオンを考えるべきタイミング

1. 治療効果が感じられない

具体的には:

  • 3〜6か月治療しても症状が改善しない
  • 薬を何度も変更しているが効果がない
  • カウンセリングを受けているが変化がない

考えられる理由:

  • 診断が不適切
  • 治療法の選択が合っていない
  • 用量や期間が不十分
  • 併存疾患の見逃し

セカンドオピニオンで確認:

  • 診断は正しいか
  • 他の治療法はないか
  • 治療抵抗性の場合の次の手

2. 診断に疑問がある

具体的には:

  • 診断名が何度も変わる
  • 説明が十分でない
  • 自分で調べた内容と違う
  • 他の病気の可能性が気になる

例:

  • 「うつ病」と診断されたが、双極性障害の可能性は?
  • 「適応障害」だけど、発達障害が背景にある?
  • 身体症状が強いが、身体疾患の除外は十分?

セカンドオピニオンで確認:

  • 診断の根拠は何か
  • 鑑別診断は適切か
  • 追加の検査が必要か

3. 処方薬に不安がある

具体的には:

  • 薬の種類や量が多すぎる気がする
  • 副作用が強く、日常生活に支障
  • 薬の必要性について説明がない
  • ネットで調べると不適切な処方に思える

多剤併用の問題:

  • ポリファーマシー(多剤併用)
  • 相互作用のリスク
  • 副作用の増加
  • 本来不要な薬が処方されている可能性

セカンドオピニオンで確認:

  • 処方内容は適切か
  • 減薬の可能性はあるか
  • 他の選択肢はあるか

4. 医師とのコミュニケーションに問題

具体的には:

  • 話を聞いてもらえない
  • 説明が不十分
  • 質問しにくい雰囲気
  • 診察時間が極端に短い(数分)

信頼関係の重要性: 精神科治療では、医師との信頼関係が治療効果に大きく影響します。コミュニケーションの問題は、治療の妨げになります。

セカンドオピニオンで確認:

  • 他の医師の対応を体験
  • 相性の良い医師を見つける

5. 重大な決断が必要な場合

具体的には:

  • 入院を勧められた
  • 電気けいれん療法(ECT)を提案された
  • 長期的な薬物療法を提案された
  • 妊娠中・授乳中の治療方針

セカンドオピニオンで確認:

  • その治療は本当に必要か
  • 他の選択肢はないか
  • リスクとベネフィットの評価

6. 専門的な治療が必要そうな場合

具体的には:

  • 難治性のうつ病
  • 双極性障害
  • 統合失調症
  • 摂食障害
  • 発達障害
  • 依存症

専門医の必要性: これらの疾患は、専門的な知識と経験が必要です。一般的な精神科クリニックで対応が難しい場合もあります。

セカンドオピニオンで確認:

  • 専門医への紹介が必要か
  • 専門的な治療法はあるか

7. 生活に大きな支障が続いている

具体的には:

  • 休職・休学が長期化
  • 復職・復学できない
  • 日常生活が送れない
  • 家族関係が悪化

セカンドオピニオンで確認:

  • 治療方針の見直し
  • リハビリテーションの必要性
  • 社会資源の活用

8. 直感的に「何か違う」と感じる

具体的には:

  • 医師の態度に違和感
  • 治療方針に納得できない
  • 「このままで良いのか」という不安

患者の直感は重要: あなたの体と心を一番よく知っているのは、あなた自身です。違和感があるなら、それは大切なサインかもしれません。

セカンドオピニオンを受ける方法

ステップ1: 現在の主治医に相談(推奨)

伝え方: 「治療について他の先生の意見も聞いてみたいのですが、紹介状を書いていただけますか?」

メリット:

  • 診療情報提供書(紹介状)が得られる
  • スムーズにセカンドオピニオンを受けられる
  • 医師との関係が悪化しにくい

主治医が難色を示したら:

  • 「より良い治療を受けたいという気持ちを理解してほしい」と伝える
  • それでも拒否される場合、患者の権利として紹介状を求める
  • 最終的には、紹介状なしでもセカンドオピニオンは可能

ステップ2: セカンドオピニオン先を探す

選び方:

専門性:

  • 疾患の専門医
  • 特定の治療法の専門家
  • 大学病院や専門クリニック

アクセス:

  • 通いやすい場所
  • 予約の取りやすさ

情報収集:

  • インターネットで検索
  • 医療機関のホームページ
  • 口コミ(ただし参考程度に)
  • 患者団体の情報

セカンドオピニオン外来: 一部の医療機関では、セカンドオピニオン専門の外来を設けています。

ステップ3: 予約

電話で予約:

  • 「セカンドオピニオンを希望します」と伝える
  • 診断名、主な症状を簡単に説明
  • 紹介状の有無を伝える

必要書類を確認:

  • 診療情報提供書(紹介状)
  • 検査結果のコピー
  • お薬手帳
  • その他(画像データなど)

費用を確認:

  • 保険適用か、自費か
  • 料金の目安

ステップ4: 受診当日

持ち物:

  • 診療情報提供書(紹介状)
  • 検査結果、画像データ
  • お薬手帳
  • 現在飲んでいる薬
  • メモ(聞きたいことをまとめたもの)

診察の流れ:

  1. 紹介状を基に経過を確認
  2. 追加の問診
  3. 必要に応じて診察
  4. 意見の提示
  5. 質疑応答

質問例:

  • 診断は適切ですか?
  • 他の可能性はありますか?
  • 現在の治療は標準的ですか?
  • 他の治療法はありますか?
  • 薬の量や種類は適切ですか?
  • 今後の見通しはどうですか?

ステップ5: その後の判断

セカンドオピニオンの結果:

1. 現在の治療が適切と確認された → 安心して元の医師のもとで治療を継続

2. 治療の修正提案があった → セカンドオピニオンの内容を主治医に伝え、相談 → または転院を検討

3. 診断そのものが異なった → 第三の医師の意見(サードオピニオン)を検討 → または転院を検討

転院を決断する場合

転院を考えるべき状況

  1. セカンドオピニオンで大きな見解の相違
  2. 主治医との信頼関係が修復不可能
  3. 専門的な治療が必要
  4. セカンドオピニオン先での治療を希望

転院の進め方

1. 現在の主治医に伝える

  • 「転院したい」と正直に伝える
  • 紹介状を依頼
  • 感謝の気持ちも伝える

例: 「いろいろ考えた結果、他の医療機関で治療を受けたいと思います。これまでありがとうございました。紹介状をお願いできますか?」

2. 診療情報提供書を受け取る

  • 経過、診断、処方内容などが記載
  • 次の医師が治療を継続しやすくなる

3. 新しい医療機関を受診

  • 「転院希望です」と伝える
  • 紹介状を提出
  • 改めて問診・診察

4. 薬の継続

  • 紹介状があれば、スムーズに薬が継続される
  • 急な変更は避けられる

セカンドオピニオンを受ける際の注意点

1. 診療情報提供書は重要

理由:

  • 正確な情報が伝わる
  • 検査の重複を避けられる
  • 適切な意見が得られる

紹介状なしの場合:

  • 自分で説明する必要がある
  • 正確性に欠ける可能性
  • 追加検査が必要になることも

2. 複数の意見を聞く場合の判断

2人の医師の意見が異なる場合:

  • 第三の医師の意見(サードオピニオン)
  • それぞれの根拠を比較
  • 自分が納得できる方を選択

判断の基準:

  • エビデンス(科学的根拠)の有無
  • 説明の丁寧さ
  • 信頼できる印象
  • 自分の価値観に合うか

3. 「ドクターショッピング」に注意

ドクターショッピングとは: 医療機関を次々と変え、自分に都合の良い診断や処方を求める行為

問題点:

  • 一貫した治療が受けられない
  • 薬の重複や相互作用のリスク
  • 時間と費用の無駄
  • 根本的な改善にならない

適切なセカンドオピニオン:

  • 目的が明確
  • 2〜3人の意見を聞く程度
  • 最終的に1人の主治医を決める

4. 費用

保険診療:

  • 通常の初診料(約2,800円、3割負担)
  • 診療情報提供書があれば、選定療養費不要

セカンドオピニオン外来(自費):

  • 30分〜1時間: 10,000〜30,000円程度
  • 保険適用外

5. セカンドオピニオンは権利

患者の権利:

  • 説明を受ける権利
  • 選択する権利
  • 拒否する権利
  • セカンドオピニオンを求める権利

医師の義務:

  • セカンドオピニオンを妨げない
  • 診療情報提供書を作成する

良い医師・医療機関の見分け方

良い医師の特徴

  1. 話を丁寧に聞く

    • 患者の話を遮らない
    • 共感的な態度
  2. 説明が丁寧

    • わかりやすい言葉で説明
    • 質問に誠実に答える
  3. 選択肢を提示

    • 一方的に決めつけない
    • メリット・デメリットを説明
  4. エビデンスに基づく

    • 科学的根拠のある治療
    • 最新の知識を持っている
  5. 患者を尊重

    • 希望を聞く
    • 一緒に治療を考える姿勢
  6. セカンドオピニオンに寛容

    • 快く紹介状を書く
    • 患者の選択を尊重

避けるべき医師の特徴

  1. 話を聞かない

    • 診察時間が極端に短い
    • 一方的に話す
  2. 説明が不十分

    • 診断や治療の根拠を説明しない
    • 質問に答えない
  3. 薬に頼りすぎる

    • すぐに薬を増やす
    • 多剤併用が多い
    • 生活指導がない
  4. 高圧的な態度

    • 患者を見下す
    • 「医者の言うことを聞けばいい」という態度
  5. セカンドオピニオンを拒否

    • 「他の医者に行くなら診ない」と脅す
    • 紹介状を書かない

よくある質問

Q1: セカンドオピニオンを受けると、主治医との関係が悪くなりませんか?

A: 適切に伝えれば、ほとんどの医師は理解してくれます。「より良い治療を受けたい」という気持ちは正当なものです。むしろ、快く紹介状を書いてくれる医師は信頼できると言えます。

Q2: セカンドオピニオンの結果、元の医師が正しかったとわかったら気まずいです

A: 全く問題ありません。「先生の治療が適切だと確認できて安心しました」と伝えれば、むしろ信頼関係が深まります。セカンドオピニオンは、現在の治療への納得感を高めるためでもあります。

Q3: 紹介状なしでセカンドオピニオンを受けられますか?

A: 受けられますが、診療情報提供書があった方が正確な意見が得られます。主治医に言いにくい場合は、紹介状なしでも受診は可能です。

Q4: 何人の医師に意見を聞けばいいですか?

A: 通常、2〜3人で十分です。意見が一致すればそれで納得できますし、異なる場合でも3人目で判断材料が揃います。それ以上は「ドクターショッピング」になりかねません。

Q5: セカンドオピニオン先で「転院した方がいい」と言われました。どうすればいいですか?

A: まず、なぜそう言われたのか理由を確認してください。専門的な治療が必要、現在の治療が不適切、など理由があるはずです。その上で、転院するか、現在の主治医と相談してみるか、判断しましょう。

まとめ

セカンドオピニオンは、より良い治療を受けるための重要な権利です。

セカンドオピニオンを考えるべきタイミング:

  1. 治療効果が感じられない(3〜6か月以上)
  2. 診断に疑問がある
  3. 処方薬に不安がある
  4. 医師とのコミュニケーションに問題
  5. 重大な決断が必要
  6. 専門的な治療が必要そう
  7. 生活に大きな支障が続いている
  8. 直感的に「何か違う」と感じる

セカンドオピニオンの進め方:

  1. 主治医に相談(推奨)
  2. セカンドオピニオン先を探す
  3. 予約する
  4. 診療情報提供書を持参して受診
  5. 結果を基に判断(継続 or 転院)

大切なこと:

  • セカンドオピニオンは患者の権利
  • 遠慮する必要はない
  • 「ドクターショッピング」にならないよう注意
  • 最終的に信頼できる医師を見つける

当院は、セカンドオピニオンを歓迎しています。他院で治療を受けているが意見を聞きたい、という方も大歓迎です。また、当院で治療中の患者様がセカンドオピニオンを希望される場合も、快く紹介状を作成いたします。

あなたに合った治療を見つけることが、回復への一番の近道です。不安や疑問があれば、遠慮なくご相談ください。一緒に、最良の治療を探していきましょう。

坂田亮介

著者

名東メンタルクリニック 院長
精神保健指定医・日本精神神経学会専門医

医学的監修済み (2025年10月11日)

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